最近「新彊ウイグル自治区」で暴動が多発しているようですが?

 中国の「新彊ウイグル自治区」と呼ばれる土地は「テュルク系の住民が住む土地」という意味の「トルキスタン」とも呼ばれます。トルキスタンはパミール高原によって東西に分かれます。西トルキスタンはソ連の崩壊によりカザフスタン、ウズベキスタンという名前で1990年代に独立を果たしましたが東トルキスタンは1949年に中華人民共和国に侵攻され、支配されて以来、ずっと圧政に苦しんでいます。

 2009年7月5日、首府ウルムチで「暴動」が起きました。その前月の6月26日、広東省の玩具工場で働いていたウイグル人の若者が漢人の工員に惨殺されたので、その事件の解決と犯人逮捕を求めるデモが7月5日に行われたのです。
学生が主体となって行われた平和的なデモであったにもかかわらず、中国の武装警察はデモ隊に発砲し、その場で数百人が射殺されたと言われています。その夜、いきなり停電になり、電気がついた時には多くの人が行方不明になっていたとも言われています。この「ウルムチ事件」の真相はいまだに闇の中です。

これまで「新彊ウイグル自治区」では何度も「暴動」が起きていますが、最近、その頻度は増しています。その背景にはウイグル人の文化や歴史・宗教・言語を抹殺してしまおうとする中国政府の犯罪的な「民族浄化政策」があります。

「ウイグル人」とはどのような人たちですか?

 ウイグル人は中国人とは何の共通点もない、まったく別の民族です。
容貌は西洋人に近く、色白で掘りの深い顔立ちです。大部分の人はイスラム教スンニ派を信仰しています。ウイグル語はアルタイ語族で、文法は日本語に似ています。ウイグル人は音楽や踊りが好きで、日本の生活習慣と似た習慣を持っています。トルコ人もそうですが、中央アジアの国々はロシアの脅威に悩まされていたので日本が日露戦争でロシアを破ったということから親日家が多いです。

東トルキスタンの歴史はテュルク系、モンゴル系の王朝による統治の時代が長く、清朝の時代には一時的に中国の支配下に入りましたが各地域はウイグル人の貴族や土俗の有力者によって治められていました。1933年と1944年にはテュルク系民族が主体となって東トルキスタン共和国を誕生させましたが、いずれも短命に終わっています。

「新彊ウイグル自治区」の主席はウイグル人ではないのですか?

 確かに主席はウイグル人ですが実権は漢人の共産党書記が握っています。「自治区」とは名ばかりで、ウイグル人の自由や人権はまったく認められていません。東トルキスタンの国土は日本の約5倍で人口の8割はウイグル人が占めていました。しかし中国に侵略されてから大量の漢人が移住し、今ではウイグル人は人口の4割程度に減ってしまいました。

中国政府は大量の漢人を移住させる一方で、数年前から未婚のウイグル人女性を数万人単位で強制的に沿岸部に移住させています。農村部の若者も中国沿岸部に移送され、安い労働力として酷使されています。「ウルムチ事件」が起きたきっかけになった広東省の玩具工場での事件で殺された若者も、広東省に移送されたウイグル人でした。このような残酷な仕打ちに異議を唱える者は中国政府によって「分離主義者」「テロリスト」などというレッテルを貼られ、法的な手続きを経ることもなく監獄や強制収容所に送られてしまいます。

なぜ中国はウイグルを侵略したのですか?

 「新彊ウイグル自治区」がある中央アジアはシルクロードの舞台であり、多くの仏教遺跡で有名なところです。NHKが放映した番組「シルクロード」は、この地域を歴史ロマンあふれる神秘の地として描き、歴史好きや遺跡好きの日本人の夢をかき立てました。

しかし中国は米ソ冷戦時代からソ連の技術援助を受け、核兵器の開発に取り組んでいました。中国が行なった最初の核実験は1964年10月、なぜか東京オリンピックの真っ最中でした。以来、中国が強行した核実験はなんと46回、総威力22メガトンは広島に落とされた原爆の1375発分に相当すると言われています。その実験場がまさに「新彊ウイグル自治区」だったのです。中国はここを軍事基地にするために侵略したのです。

アメリカもソ連も核実験を行いましたが、風下の住民を予め避難させ、立ち入り禁止区域を作ってから実施しています。国民の健康被害など考慮しそうもないソ連でさえ、セミパラチンスク実験場では四国ほどの面積の土地から住民を外へ移住させ、周囲を鉄線で囲み、道路を封鎖して行ないました。しかし中国はそれらの配慮を一切せず、ウイグル人の居住区で地下核実験ではなく、なんと地表核実験を行ったのです。どれほどのウイグル人が犠牲になったことでしょうか。札幌医科大学の高田純教授は「19万人が中枢神経死などで急性死亡し、129万人が急性放射線障害などの健康被害に遭っただろう」と推定しています(『核の砂漠とシルクロード観光のリスク』医療科学社)。世界ウイグル会議の総栽ラビア・カーディル女史は「75万人が死亡した」と主張しています。

私たちは「日本は世界で唯一の被爆国」と思っていましたが、実はウイグル人は広島の被爆者の4倍以上の犠牲者を出していたのです。この事実は未だに中国によって隠蔽されています。しかし、NHKはそれを知っていながら「シルクロード」製作のためにこの重大な事実に目をつぶっていた可能性が高いです。

NHKが「シルクロード」を放送し始めたのは1980年ですが、中国の核実験は1996年7月まで続けられていました。「シルクロード」ブームによって中国の遺跡巡りをする日本人の数は増加し、1996年までに約27万人の日本人観光客が放射能に汚染された地域を何も知らずに訪れていたと推測されます。福島の原子力発電所の放射能漏れは連日、大事件のように報道するNHKが中国の悪魔のような核実験には一切触れないのはなぜなのでしょうか?

現在のウイグル人の生活はどのようなものですか?

 共産主義は宗教を否定しているので、ウイグル人はイスラム教の習慣や行事などが行えなくなってしまいました。ウイグルの歴史や文化に関する出版活動なども制限されています。学校教育は中国語で行われ、ウイグル語は徐々に忘れられています。子供がウイグル語を話せないので、親子の会話も成り立たない状態に追い込まれています。

東トルキスタンは石油、石炭、レアメタルなどの資源が豊富な地域ですがそれらは中国に強奪され、ウイグル人は何の恩恵も受けていません。一つの民族が一体感や連帯感を維持するためには宗教や言語、文化などが必要ですが、それらを奪われたウイグル人社会は内部から崩壊しつつあります。ウイグルの若者は中国の恐怖政治や経済的な差別などでモラルを失い、ドラッグにおぼれたりエイズにかかる等、深刻な状態にあります。中国共産党がやっていることは、一つの民族を地球上から消そうとする恐ろしい犯罪と言えます。

国連はウイグル人の人権を守らないのですか?

 チベット人同様、ウイグル人も自由と人権を求めて他国に亡命する人があとを絶ちません。しかし、国際社会は中国に遠慮をしてか、彼らの人権を真剣に守ろうとしてきませんでした。国際法には生命や自由が奪われかねない人々を「追放したり送還することを禁止する原則」があります。しかし、実際には亡命ウイグル人を保護すべき周辺国が中国との経済関係を維持するために亡命者を強制送還するケースが少なくありません。

 2009年12月にはカンボジアに逃げたウイグル人22人が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に亡命申請をしていたにもかかわらず、中国に強制送還されてしまいました。また2011年5月にはカザフスタンに逃げていたエリシディン・イスライル氏が、UNHCRを通してスウェーデンが亡命受け入れを決定していたにもかかわらず強制送還されました。2011年8月8日には子供2人と女性1人を含む5人のウイグル人がパキスタンから強制送還されました。

このようにUNHCRに亡命申請し、難民として認定されてもその国の政府の判断によって中国に送還されるウイグル人もいるのです。そして亡命申請してから中国に強制送還された彼らはほぼ例外なく投獄され、無期懲役や死刑が待っていると思われます。

参考文献:高田純『核の砂漠とシルクロード観光のリスクーNHKが放送しなかった桜蘭遺跡周辺の不都合な真実』(医療科学社)


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